「うちは結局、何枚持っていれば足りるんでしょうか」——リネンについて相談を受けるとき、もっとも多い質問のひとつです。夏のピークを越えた秋は、この問いに向き合うのにちょうどいい時期です。何が足りなくなったかの記憶はまだ新しく、次の繁忙期までには時間があります。
ところが在庫の話は、実務では「感覚」で決まりがちです。前任者から引き継いだ枚数のまま何年も見直していない、という施設も珍しくありません。
そこでこの記事では、パーストック(適正在庫)を考えるときの基本的な計算式と、沖縄ならではの上乗せの考え方を整理します。はじめにお断りしておくと、ここで示す数字は業界で決まった標準ではなく、一般的な考え方の一例です。最終的な枚数は、施設の稼働状況と運用に合わせて調整してください。
パーストックとは「切らさないために持つ総量」
パーストック(par stock)とは、業務を止めないために常に確保しておく在庫量のことです。リネンの場合は、客室に敷いてある分だけを指すのではありません。洗濯に出ている分、輸送中の分、予備として館内の棚に置いてある分——これらをすべて足した総枚数がパーストックです。
考え方の軸はシンプルで、1枚のリネンは常にどこかの工程にいるということです。客室で使われているか、洗濯・輸送の途中か、棚で出番を待っているか。この「同時に存在していなければならない場所の数」が、必要枚数を決めます。
基本の計算式
もっとも基本的な式は次のとおりです。
必要枚数 = 客室数 × 1室あたり必要枚数 × 回転セット数
- 客室数:稼働させている室数
- 1室あたり必要枚数:その品目を1室に何枚セットするか(ツインならバスタオル2枚、など)
- 回転セット数:同じ枚数のかたまりを何セット持つか
たとえば30室の施設で、1室あたりバスタオル2枚、回転セット3なら「30 × 2 × 3 = 180枚」が出発点になります。
回転セットは「3セット」から考える
回転セット数の基本形としてよく使われるのが、次の3セットです。
| セット | 置かれている場所 | 役割 |
|---|---|---|
| 1セット目 | 客室で使用中 | いま実際に使われている分 |
| 2セット目 | 洗濯・輸送中 | 回収され、工場で処理され、戻ってくるまでの分 |
| 3セット目 | 館内の予備 | 明日の清掃にすぐ出せる待機分 |
この3つが欠けると、どこかで必ず詰まります。予備が無ければ納品が半日遅れただけで回らず、洗濯中の分を見込んでいなければ回収に出した瞬間に足りなくなります。
沖縄では「3セット」に上乗せして考える
3セットはあくまで平常運転の最低ラインです。実務では、次のような要素を見込んで上乗せを検討します。
- 繁忙期の稼働:満室が続く時期は、回収も洗濯も混み合って戻りが遅くなります
- 台風・荒天:道路や空路・航路が止まれば、回収も納品も停止します。復旧後は各施設の分が一斉に動くため、平常時より時間がかかります
- 離島・遠隔地:便の本数が限られるぶん、1回の遅れの影響が大きくなります
- 連泊中の交換希望:想定より交換依頼が多いと、1日の使用量が跳ね上がります
- 汚損・破損による抜き取り:シミや破れで戻せない分は、常に一定数発生します
これらを踏まえ、繁忙期やリスクの高い品目では3.5〜4セット相当を目安に置く考え方もあります。ここも標準ではなく一例ですので、過去に不足した品目から優先的に厚くするのが現実的です。
自分の施設で計算してみる(記入式)
下の表に数字を書き込むだけで、品目ごとの必要枚数の目安が出ます。印刷して清掃責任者と一緒に埋めてみてください。
| 品目 | ①客室数 | ②1室あたり枚数 | ③回転セット数 | 必要枚数(①×②×③) | 現在の保有枚数 | 差分 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボックスシーツ | ||||||
| 掛けカバー | ||||||
| 枕カバー | ||||||
| バスタオル | ||||||
| フェイスタオル | ||||||
| バスマット | ||||||
| ユニフォーム等 |
差分がマイナスなら不足、大きくプラスなら持ちすぎの可能性があります。不足はシーツ類よりタオル類で起きやすいため、タオルの行から埋めるのがおすすめです。
持ちすぎもコストになる——回転数の点検
在庫は多いほど安心ですが、増やせば保管スペースも管理の手間も増えます。使われないまま棚に眠るリネンは、湿気や日焼けで少しずつ劣化していきます。そこで、増やす前に一度「何日分持っているか」を点検します。
保有総枚数 ÷ 1日の使用枚数 = 何日分の在庫があるか
3セット構成ならおおむね3日分前後になるはずです。この数字が想定より小さければ不足、逆に極端に大きければ、その品目は増やす対象ではありません。品目ごとに出してみると、厚い品目と薄い品目の偏りがはっきり見えてきます。
明日から着手するなら、まず1品目だけ実測することをおすすめします。バスタオルなど不足しやすいものを選び、1週間の使用枚数を数えて上の式に当てはめる。それだけで、感覚で語られていた在庫の議論が数字の議論に変わります。
まとめ
- パーストックは「客室にある分」ではなく、洗濯中・予備を含めた総枚数で考える
- 基本式は「客室数 × 1室あたり必要枚数 × 回転セット数」
- 回転セットは「使用中/洗濯・輸送中/館内予備」の3セットが出発点
- 沖縄では繁忙期の混雑と台風リスクを見込み、3セットに上乗せして検討する
- ここで示した枚数は業界標準ではなく一般的な考え方の一例。1品目の実測から始めるのが確実
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