沖縄のリネンサプライ工場、ノゼランリネンサプライです。今回は、リネンサプライ工場を始めようとお考えの方向けの記事です

リネンサプライ工場を始めたい!

ホテルもどんどん増えているし、リネンサプライ工場をはじめてみようかな?とお考えの方向けに、記事を書いてみようと思います。インターネット上では様々な情報が氾濫していますが、実際に工場を経営している立場から、少しご紹介したいと思います。

必要なもの

最低500平米以上の土地(工場を建てても大丈夫そうな立地)

工場

トラック数台

洗濯機、乾燥機、シーツアイロナー

働いてくれる人を集め、定着させる力

売上が3年ほど立たなくともやっていける資金力

一つ一つ説明したいと思います。

土地

工場とお客様用500平米、約150坪は最低必要です。しかし従業員が車で出勤するならば、駐車場が必要ですから、おおよそ倍の300坪程度は必要でしょう。もちろん法律的に工場を建てて大丈夫な場所であることも大切です。

全国の平均を書いてみました。

都道府県坪単価(円/坪)300坪の価格(円)
北海道11720035160000
青森県10040030120000
岩手県10730032190000
宮城県597300179190000
秋田県8790026370000
山形県11320033960000
福島県14450043350000
茨城県12670038010000
栃木県13500040500000
群馬県13460040380000
埼玉県605100181530000
千葉県529900158970000
東京都44279001328370000
神奈川県1001100300330000
新潟県13930041790000
富山県12980038940000
石川県16040048120000
福井県12340037020000
山梨県13980041940000
長野県14120042360000
岐阜県14260042780000
静岡県17470052410000
愛知県812100243630000
三重県13340040020000
滋賀県14060042180000
京都府1101800330540000
大阪府1246600373980000
兵庫県604200181260000
奈良県17580052740000
和歌山県11670035010000
鳥取県11120033360000
島根県13120039360000
岡山県16560049680000
広島県17970053910000
山口県14210042630000
徳島県11050033150000
香川県15230045690000
愛媛県13370040110000
高知県12280036840000
福岡県817900245370000
佐賀県12130036390000
長崎県12960038880000
熊本県14840044520000
大分県12930038790000
宮崎県13520040560000
鹿児島県13670041010000
沖縄県21500064500000

我々の工場のある沖縄県では、土地の価格に加えて不動産業者の仲介手数料や税金などを加味すると、おおよそ7,000万円が必要となります。

関西地方では3億円程度、東京は13億…ケタが違いますね。沖縄はだいぶ安い方であるといえます。

工場

300平米、約90坪が必要です。実際にはこの半分の敷地が工場で、残り半分はリネンのシーツやデュベを置く置き場としてスペースが必要となります。リネンは、場所を非常に取るのです。

構造坪単価(円/坪)90坪の建築費(円)
鉄骨造(全国平均)1,154,000円約1.04 億円(=1,038万円 × 90)

工場の建造は、大まかに1.1億円あれば足りると思います。

トラック

1台500万円程度でして、2台で1,000万円。

機械類

シーツアイロナー

シーツをたたんでアイロンしてくれるありがたい機械です。これがないと始まりません。スタンダードな3人掛けのもので5,000万円程度。1人でやる機械もありますがスピードが下がるのでやはり3人掛けがおすすめです。

洗濯機・乾燥機

洗濯機が100キロのもので1,500万円、乾燥機が50キロで500万円程度。4揃えすると、8,000万円程度。中古の洗濯機乾燥機は、大きいものはほぼ出てこず、また壊れるとどうしようもないので新品を買うべきです。

ボイラーとエアーコンプレッサー

蒸気で動きますのでこれらを動かすためにはボイラーとエアーコンプレッサーが必要です。詳しい説明は省きますが、おおよそ3,000万円程度。

運搬費及び設置代金

これがそんなにかかるのか!と目を疑いたくなるほど物凄い出費でして、2,000万円近くかかります。おかしいでしょ?と思われると思いますが、本当なのです。設置業者に1,300万円程度、電気水道工事代で700万円程度。

機械類合計で1.8億円程度。

イニシャルコスト合計

●沖縄の場合(単位は万)

土地代 7000

工場建設費 11000

機械類 18000

トラック 1000

合計 3.7億円程度。

●埼玉県の場合

土地が18000万円の為、+1.1億して 4.8億円。

●福岡県の場合

土地が245000の為、30億円弱。

上記に記載していませんが、シーツなどの仕入れにまた都度数百万円かかります。

リネンサプライは通常の営業活動が難しい

ここまでお金をかけたらさぞや儲かるでしょうとお思いの方も多いと思います。ところが、リネンサプライ業界は、大手業者がシェアを牛耳っており、有象無象で強い圧力をかけてきます。

例えば弊社がお客様からお問い合わせいただいて、リネンの提供をしようとしたら、「何うちの客とってるんだこら!?」と恫喝の電話がかかってきました。

これらの同業者の言うことに従わなければ、シーツやデュベ、機械類も仕入れを止められてしまいます。シェアを握っている会社が大手過ぎて、機械メーカーに圧力をかけることが出来てしまうのです。

その為、一般の感覚でホテルに「開業しました!どうですか?」と営業するのは絶対にNG。大手に取り入って、なんとか下請けの仕事を回してもらうしか、生きる道がないのです。

ホテルが増えているといってもそうそう毎日ドンドコ新しいホテルが出来るわけがありません。ですから、何年も大手の下請けで耐えて、頭を下げて、何十年もかけて資金回収を行う姿勢が大切です。

そんなこと知らない、勝手にやる!と数億円もかけて開業した業者も沖縄に数社いましたが、この10年で生き残っているリネンサプライ工場は皆無です。みな吸収・合併されてしまいました。

ノゼランは慎重な会社なので、他社様との融和を大切に営業しているため、何とかやっていけております、同業他社様には日々感謝です。

高いランニングコスト

リネンサプライなんて一度初期費用を払えばお金かからなくて全部利益でしょ?と思われるかもしれませんがさにあらず。

大まかにですが、上記のサイズの工場がちょうど弊社の工場のサイズですがフル稼働した場合の月の金額が、

電気代 50万円

水道代 50万円

ガス代  60万円

洗剤代  20万円

袋代  20万円

ざっと200万円近くかかります。さらに最初の初期費用を融資を受けていればその返済も必要なことは言うまでもありません。たくさんの種類の洗剤を使うのと、袋代もかなりの金額がかかるのです。安い洗剤にすれば洗剤代金は抑えられますが、すぐリネンが駄目になります。

そしてクリーニング師の資格が必要なのですが、これを持っている従業員を探すのがまた一苦労で、クリーニング工場で働いてくれる人を探し、定着させるのも大きな苦労が伴います。

4-5名の正社員とアルバイトを雇うと月300万円程度、合計500万円程度。

先の初期費用3.7億円を15年3%利息で返済とすると毎月255万円、つまり合計755万円が合計のキャッシュアウトです。

ところで、このサイズの工場で見込める利益の最大値は、おおよそ月売上800万円程度。月800万円まで上げるにはそれなりの苦労と他社への配慮、努力と年数が必要ですから、うまくいって3年くらいしたら、800万円-経費755万エ、月に45万円くらい利益が出てそこから経営者の給料が出る感じです。シーツ1枚100何十円の世界ですから、非常にシビアな世界です。

大雑把な見積もりではありますが、そう外れていないと思います。リネンサプライの機械導入業者はもっと夢を膨らませてよいデータを見せてくるのですが、それらを鵜吞みにしないでください!

我々は実際に運営しているので、夢がない話で申し訳ないですがこれが現実です。それでもやりたい方は、開業を考えてみられてはいかがでしょうか。もう設備を揃えているので頑張るしかないのですが、ここまでお金がかかるのであれば正直、もっと他の道があったのではと思います。最初にわからないんですよ、後出して料金を業者が提示してくるものですから。

筆者は、それだけ出すならばホテルでも運営している方が良いような気がいたします。もちろんもっと安い場所で土地を買えばコストは下がりますが、そこにお客様がいるか、という話になってまいりますね。

離島に関して

沖縄だけかもしれませんが、離島は常に水不足。基本的に住民優先の為、上水道を工場は使わせてもらえません。ですから、土地を購入されたら、必ず地下水を掘り当てる必要があります。賃貸は掘ることが出来ないので論外。

地下水を掘るのに数カ月、かつ1,000万円近くかかりまして、もし出たらラッキー!ほとんどの場合海水だと思いますので、ろ過装置などでまた1,000万円程度と毎月ランニングコストがプラス数十万円。

出なければ終わりですので、1,000万円捨てたと思って諦めて撤退してください。本当にそれしか道がありません。50メートル以上、深い時には150メートル以上も掘り進むため、掘る前に水が出るかどうかは、プロでもわからないそうです。

離島ですから、機械のメンテナンス業者もいません。ひどい時には、新品でも1日何回もエラーを起こします。機械が壊れたら、業者が本島からきてくれるのを数日待つしかないのでもう本当に辞めておいた方がいいと思いますよ。

以上、ご参考になれば幸いです。